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全国のキエーロ市民モニターの報告書をレビュー

コンポストプロジェクト

自然の力だけで生ゴミが消えるキエーロ式コンポストは,全国のさまざまな自治体が注目しており,独自の市民モニター調査が行われています。本記事では,参考になるモニター結果を紹介し,コメントをします。なお私たちは,小型の「キエーロ式プランターコンポスト」が,ここ都心では本当に最適&最強と思っているので,どうしてもそれと比較する形のコメントになることはご了承ください。

川崎市 生ごみ処理機「キエーロ」の市民モニター事業報告書

神奈川県川崎市は,ここ東京都大田区のすぐ隣の自治体です。矢口地域からは自転車で5~10分ほど走れば川崎市です。環境や住宅状況も似ているので,とても参考になります。

モニター期間は2016~2017年度。使用したキエーロは,「ベランダdeキエーロ」と呼ばれるタイプの,底があり,深くて大きい,木製のものです。ベランダ用と言われていますが,正直,なかなかの大きさと重量です(開発者松本さんの設計図によると幅90cm×奥行き45cm×高さ80cm)。また金額も,川崎市がいくらで提供したかは不明ですが,神奈川県内では2~3万円程度での取引が多く,高価です。

画像出典:川崎市生ごみ処理機「キエーロ」の市民モニター事業報告書

▼川崎市 生ごみ処理機「キエーロ」の市民モニター事業報告書(平成30年3月)
https://www.city.kawasaki.jp/300/cmsfiles/contents/0000096/96132/houkokusyo.pdf

  • 36%の人が,周りの人に勧められないと回答していました。やはりこのタイプは大きさや重量,そして金額が,ネックのようです。深いので土をかきまぜるのが大変という意見もありました。ベランダ型ですが,モニターからは「ベランダには不向き」とハッキリ書かれていました。
  • そうなのです。このタイプをこの地域で普及するのは,まず無理なのです。小さく軽量で丈夫で安価なプランター型を,私たちは全力で推します

鶴ヶ島市 【継続使用者対象】生ごみ処理器キエーロアンケート調査結果

埼玉県鶴ヶ島市も,先の川崎市と同様に底あり木製キエーロ(いわゆる「ベランダdeキエーロ」タイプ)の購入者にアンケートをとりました。

▼鶴ヶ島市 【継続使用者対象】生ごみ処理器キエーロアンケート調査結果(2022年)https://www.city.tsurugashima.lg.jp/sp/page/page009366.html

© City of Tsurugashima
  • このアンケート結果の注目ポイントは,「キエーロをどのくらいの頻度で使っていますか」の質問に対して,冬場では46%,夏場でも35%の人が「使っていない」と回答していたことです。使用中断ですね。自由回答を見ると,キッチンからの移動が手間という意見もありました。そうですよね。なのでキッチン近くのベランダに置くのがお勧めです。都心のコンパクトな住宅は,キッチンとベランダが近いので,移動はラクだと思います。コンポストは広い庭がある人がするものというイメージも強いですが,実は都心のコンパクト住宅こそコンポストに向いている説を私は唱えます!
  • そのほかの自由回答では,先の川崎市でもありましたが,「現在のキエーロは縦に長いため、下側の土がうまく使用できない」「土の一番下までは混ぜ込めない」という意見もありました。このタイプは深さも大きな課題だと感じています。土のかき混ぜや出し入れが大変ですし,背の低い子どもは,台にのぼらないと日常使用もできません。いきちかクラブが推すプランター型は高さ35センチ。もちろん幼児も使えます

小松島市 生ごみ分解型処理容器(キエーロ) 耐久性モニタリングに関するアンケート調査結果について

徳島県小松島市では,容器の耐久性のモニタリングを行っていました。分解力や有効性は十分と分かったうえで,次に行ったのが耐久性調査でした。キエーロ本家の「バクテリアdeキエーロ」と「ベランダdeキエーロ」の2種類のようです。どちらも木製の大きいタイプです。

▼生ごみ分解型処理容器(キエーロ) 耐久性モニタリングに関するアンケート調査結果について(2023年)
https://www.city.komatsushima.lg.jp/fs/5/3/7/4/5/5/_/r4_kie-roanke-to.pdf

  • 3%の人が,使用2~3ヶ月で,水気(油分含む)が木製の箱の外に染み出してきたそうです。コンポストにとってはほどよく水分が抜けることも大切と思っていますが,木材の場合は腐敗につながるので心配ですね。もちろん,樹脂製プランターであれば物理的な破損がない限り,底穴以外から染み出すことはありません。そして木材より明らかに丈夫で長持ちします。いきちかクラブのキエーロのプランターの材質は,リサイクルポリプロピレンです。
  • 小松島市の「ベランダdeキエーロ」には,木材の内側に防水シートを貼っているようです。大半の人がこのシートを「あったほうがいい」と回答しつつ,シートがはがれてくるのは気になるようです。

東村山市 ミニ・キエーロ市民モニター事業報告(令和3年3月)

東京都東村山市は,ベランダdeキエーロではなく,ミニ・キエーロと称して,プランター型を普及しています。いきちかクラブが推奨するキエーロ式プランターコンポストと似たタイプなので,参考になる点が非常に多いです。なお,東村山市は東京都内で一番キエーロ普及に積極的な印象です。素敵なキエーロ紹介動画もあるので貼っておきます。

▼東村山市ミニ・キエーロ市民モニター事業報告(令和3年3月)https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/kurashi/gomi/keihatsu/namagomi/kiero/condition.files/monitorhoukoku.pdf

© Higashimurayama City
  • モニターは7月から12月までの半年間。期間終了後も87.2%の世帯が,利用の継続を希望。残り12.8%の継続を希望しない理由はレポートからはハッキリしませんでした。
  • 66%の世帯が,ゴミの処理量がもう少し多いとよいと感じたそうです。これはわかります。コンポストは本当に便利なので,たくさん処理できるに越したことはありません。単純に大きくするほど処理量が増すので,置き場がある方は,大きくしたり台数を増やせばよいと思います。ですが多くのご家庭では,まずはこのプランター1台で分解できる量からスタートし,そして継続いただくことが,価値高いことと思っています。
  • 投入量の1回 400gを「片手に乗る程度の量」と表現されていたのは,イメージを共有しやすいよい表現だと思いました。いきちかクラブでも今後この説明,使わせていただきます。🙏(もう少し多くても大丈夫と思いますが)
  • 東村山市のモニター結果では「玉ねぎの皮、たまごの殻、野菜の不可食部、皮・種・骨・殻類、ブロッコリー(生)、セロリ、とうもろこしの芯など」が3週間ほど経過しても分解できなかったそうです。私の感覚では,たまごの殻はよく砕けば(シャベルで簡単に砕けます)夏場1週間,春秋は2~3週間ほどで分解するので,ここは少々「異議あり」です。モニターさんは水分が足りなかったのかもしれません。野菜の不可食部はどこのことか不明ですが,原則的に,野菜は細かく刻めば十分普通に(早めに)分解します。とうもろこしの芯も,私の使用環境では,夏場は3~4週間でホロホロ(姿はあるけどもろい状態)になりました。タマネギの皮は,たしかに分解が遅めです。
  • 「臭いが強い生ごみ(生肉、魚など)は夏場に虫が発生しやすい傾向がある」という結果も,少し異議ありです。乾いた土を厚めにかぶせることを徹底していれば,夏場であっても虫は防げます
  • 「週 800g を超えて投入すると、虫が湧くことがある」という結果も,おそらく,1回の量が多くてゴミが表面に出たり,あるいは使用頻度が多く未分解のうちに掘り起こしたものが表面に出た結果と思います。ゴミの量や頻度がどうであれ,「乾いた土をかぶせる」ことが徹底されていれば虫が湧くことはほぼないと思われます。
  • 「水分量が多いと虫が湧きやすくなるため、黒土全体が乾いていなければ、水を追加しなくて良い」という内容についても,水分が足りないと分解が遅いので,私は水分の追加も検討いただきたいです。繰り返しになりますが,土の表面さえ乾いていれば虫は湧きません。ゴミとなじませる土は,にぎるとだんご状になるぐらいの水分がベストです。(なお,水の入れすぎは容器によってはトラブルになりますが,いきちかクラブのキエーロ式プランターコンポストは水が抜けるので,水の入れすぎを恐れる心配はありません)
  • 「前回投入した箇所にも、分解を促進するために生ごみを一緒に入れると、分解が早くなる」という記述は,ちょっと意味が理解しきれませんでした。分解途中の状態でゴミを追加投入すると分解が早まるという主張でしょうか?たしかに水分が足されるという意味では分解が促進されるかもしれません。しかし分解途中で掘り起こすとゴミが表面に出てにおいや虫につながるリスクもあることはご承知ください。それともこれは「生ごみ」でなく「米ぬか」か「油」の書き間違いでしょうか?
  • 「冬場は水分を加えることや土を混ぜることで分解が促進される」ということも,一概にはそうともいえないので,ちょっと異議ありです。寒い冬に水分を加えたり土を混ぜると土の温度が下がり,微生物の動きが鈍くなり,分解が遅くなることも十分ありえます。もちろん新鮮な空気を欲しがるときもありますので,そういうときはかき混ぜが必要です。土や微生物の状態を想像しながら付き合ってみてください。

千葉市 ミニ・キエーロモニター事業の実施結果

千葉県千葉市のプランター型のミニ・キエーロの使用レポートです。平成30年度から最新の令和4年度まで毎年レポートを発行しています。

▼千葉市 ミニ・キエーロモニター事業の実施結果
https://www.city.chiba.jp/kankyo/junkan/haikibutsu/mini-kiero.html

  • この千葉市のレポートで興味深いのは,ミニ・キエーロでの生ごみ処理について「うまくいっていない」という回答が,毎年相当数いること。令和4年度は,22%の人が「うまくいっていない」という回答でした。うまくいっていない理由の最多は「分解しない」で,回答者全体の13%にあたります(複数回答)。モニターは8月の1ヶ月間の使用のようですので,一番分解が進む8月に13%もの人が「分解しない」と回答するのは,ちょっと解せないところがあります。自由回答によると野菜くずもあまり分解しなかった雰囲気です。「小学生とその保護者」をメインにモニター募集したことが,何か関係しているでしょうか。もう少し詳細を聞いてみたいです。
  • (千葉市モニターでうまく分解しなかった小学生とその保護者さん,よろしければご連絡ください)

荒川区 生ごみ処理容器「ミニ・キエーロ」モニター調査結果

東京都荒川区も,プランター型のミニ・キエーロでモニター調査を行っています。千葉市と同じく使用開始1ヶ月でのアンケートです。

▼荒川区 生ごみ処理容器「ミニ・キエーロ」モニター調査結果
https://www.city.arakawa.tokyo.jp/documents/750/r5minikierokekka.pdf

  • こちらも千葉市と同じように25%の人が「うまくいっていない」と回答でした。ただし「今後も使い続けたい」は100%。自由回答を見ると,使い始めなので「自分にあった使い方」がまだ習得できていないという意味での「うまくいってない」という回答のように見えました。1ヶ月であればそれは納得です。ゴミをためたり投入するタイミング,刻み方,入れる内容,量,頻度など,最初は試行錯誤し,徐々に自分に合うスタイルを見つけていただければと思います。
  • (いきちかクラブの講座では,一つの例として,ズボラさん向けのお勧めの使い方もお伝えしています)

弘前市 キエーロ配布前後での一般廃棄物組成分析調査

本記事を一度公開した後に,青森県弘前市の,とてもおもしろい結果報告を見つけましたので追記します。キエーロを市民モニターに配布する前と後で,ゴミ集積所に出されるゴミがどう変化したかを調べています!

▼弘前市 キエーロ活用モデル事業
https://www.city.hirosaki.aomori.jp/kurashi/gomi/2022-1115-1640-49.html

  • 結果は,生ゴミが38.0%→32.2%となり,キエーロ配布後は生ゴミが約15%減少しました。(生ゴミの総重量などの変化は調べていないようです)
  • 生ゴミの中でも「未使用食品」と「調理くず」が減少し,特に「未使用食品」の減少率が大きかったそうです。サイトの中で廃棄されていた未使用食品のサンプル写真もあり,なかなかの衝撃です。キエーロ配布後に「未使用食品」の廃棄が減った理由は,ハッキリしません。キエーロで分解したのか,それともキエーロを所有すること自体がエコ意識を高めて,必要以上の購入や安易な廃棄を抑制したのか,どうなのでしょう。(どちらにしても結果的にゴミが減っているなら良きことですよね)

その他のモニター結果

以下はレビューの余裕がないのでメモ的に残します。

自治体のキエーロ式プランターコンポストのYouTube動画

YouTubeで検索すればキエーロで生ゴミが消える様子を発信している動画はいろいろありますが,自治体公式YouTubeで,そして使い方の説明でなく,消えている様子を発信しているものを,ご紹介します。今回はプランタータイプに限定してピックアップしましたが,大型キエーロの紹介動画も入れれば,全国たくさんの自治体が動画を出しています。

  • (狛江市公式動画チャンネル) キエーロde生ごみ消えーる!~「ベランダdeキエーロ」で楽しく生ごみを減量しよう!~
    開始5:14で,生ゴミ投入の3日後に土を掘り返している様子が見えます。3日でここまで!!
  • (CityOfYokohama) 生ごみが肥料に大変身!生ごみ処理器「キエーロ」とは!
    いきちかクラブが一番よく紹介しているこの動画も,開始3:54で,生ゴミ投入後何日か不明ですが土を掘り返している様子が見えます。
  • (荒川区公式) ミニ・キエーロで生ごみを消してみました(30秒バージョン)
    タイトルどおり,消える様子を発信している30秒のショート動画です。

いろいろな自治体が効果実証済みのキエーロ式プランターコンポスト。ここ大田区でも広めていきたいです。区と相談しながら進めますが,ぜひ民間の皆さま(事業者・個人)とも協働していきたいです。お力添えをお願いします!

メールでもSNSでも,お気軽にご連絡ください。
メール ikichikagakudo@gmail.com(向井)

余談

東村山市や荒川区はプランター型のキエーロを「ミニ・キエーロ」と呼んでいますが,私たちは「キエーロオフィシャル」と相談のうえ,「キエーロ式プランターコンポスト」と呼んでいます。呼び名は異なりますが,同じものを指しています。

[くらし×微生物]いきちかコンポストプロジェクト

微生物とヒトの会話シリーズ(よみもの)

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