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放課後ひろば,子ども教室,学童保育など,大田区の小学生の放課後に関する名称を解説します

放課後ひろば,子ども教室,学童保育など,大田区の小学校の放課後に関する名称を解説します 保育者向け記事

12月目前。クリスマスやお正月の準備もしなければの季節ですが,4月以降の新年度の準備も必要な季節です。来年度の大田区の学童保育の申込みも始まりました。期日まで(2022年は12月1日まで)に利用したい学童保育施設に直接申込書をご提出ください。申請用の各種書類は大田区の「学童保育利用利用募集のご案内」ページからダウンロードできます。リンクボタンをつけておきますね。

民間学童はこのとおりではありません。民間学童の申込み方法や申込み期限等は,その学童施設に直接お問い合わせください。

さて,毎年この時期になると,小学生の放課後の居場所に関する用語の乱立っぷりが目に付きます。たとえば以下のものをそれぞれ区別できている人は,どれほどいらっしゃるでしょうか。

  • 学童保育
  • 放課後ひろば
  • 放課後子ども教室
  • おおたっ子ひろば
  • 「一体型」と「単独型」
  • 児童館
  • 放課後児童クラブ
  • 放課後健全育成事業

肌感覚として,これらの名前とその内容が正しく一致している利用者は,かぎりなく少ないように感じています。

保育園に子どもを預けている保護者の多くは,小1の放課後も今まで同様に,学童保育に預けることを第一選択としています。しかし選択肢はそれ以外にもあります。十分にあります。しかし,この乱立した制度の中で,ほかの選択肢をどれほど理解できているかは疑問が残ります。

全体像を理解できないかぎり,全体の中から自分に合ったサービスを「選択する」ことはできないのではないでしょうか。

そこで,大田区の小学生の放課後に関するサービスの名称を解説していきますので,全体像を理解し,各ご家庭にどのような選択肢があるのかをあらためて考えるきっかけになれば幸いです。

そもそも厚生労働省と文部科学省の事業が混ざっている

未就学児に対しても,「保育園」と「幼稚園」という,似たような施設が別々に併存しています。保育園は,厚生労働省が児童福祉法に基づいて,幼稚園は,文部科学省が学校教育法に基づいて,それぞれ作られています。最近になって,その両方にまたがるハイブリッド型の「こども園」もできました。

これが,小学生に対しても同じように当てはまります。厚生労働省は福祉として,文部科学省は福祉に限らない教育的な面から,それぞれ子どもの放課後に関する事業をしています。この際,厚生労働省の事業と文部科学省の事業が別々に存在しているというよりは,「厚生労働省の事業」と「厚生労働省と文部科学省のハイブリッド事業」が存在しているという解釈のほうが肌感になじみます。

図1:小学生の放課後に関するサービスは,公的には,厚生労働省の事業と文部科学省の事業がある

厚生労働省は放課後児童健全育成事業(学童保育)と児童館

厚生労働省は,放課後健全育成事業児童館の事業を行っています。

ひとつめの放課後健全育成事業は,児童福祉法第6条の3第2項で規定されているもので,各自治体に「放課後児童クラブ」を作らせ運営させる事業です。厚労省は「放課後児童クラブ」という名前を使っていますが,いわゆる学童保育のことです。大田区は「放課後児童クラブ」の名称は使わず,「学童保育」を使っています。利用者もほとんど全員が「学童保育」と言っています。

2022年度は区内で85か所の学童保育施設が予定されています。

ふたつめの児童館は,児童福祉法第40条で規定される児童厚生施設の1つです。 児童に健全な遊びを提供するために,そういう施設を作らなければいけないことになっています。戦後,戦争孤児や少年犯罪の問題が多かった時期に,すべての児童の福祉の増進と文化の向上を目的として作られたそうです。

文部科学省は放課後子ども教室

文部科学省は,「放課後子ども教室」の事業を行っています。 比較的最近できました。厚生労働省のほうの放課後児童クラブは,保護者が就労などで昼間家庭にいないことが利用条件となっています。しかし保護者が在宅かどうかにかかわらず,子どもの健全な遊びや体験の場は重要です。それを提供しようというのが,この「放課後子ども教室」です。

執筆時,大田区の小学校59校のうち57校で「放課後子ども教室」が行われています。

かぶり合う学童保育と放課後子ども教室

事業元が異なる「放課後児童クラブ」(=学童保育)と「放課後子ども教室」ですが,内容的には両者はほとんどかぶっています。かぶりを前提に,両者で連携してかぶり合いながら行うことになっています。この連携自体の名前が「放課後子どもプラン」ですが,生活上でこの名前を見ることはほとんどありません。

同じ1つの施設内で,学童保育枠と放課後子ども教室枠の両方を受け入れている形を,大田区は「一体型」と呼んでいます。一体型の施設が大半ですが,「放課後子ども教室」枠だけで運営している「単独型」もあります。大田区が「一体型」「単独型」と言うときは基本的に子ども教室を主語として使っている印象です。つまり「単独型」は,学童保育だけの場所ではなく,「放課後子ども教室」だけの場所を指します。この「一体型」「単独型」は主語が何かをハッキリさせないと混乱する用語なので,使う場合はご注意ください。

一体型の場合,学童保育枠で利用している子どもも,「放課後子ども教室」枠で利用している子どもも,基本的には混ざり合って遊んでいます。おやつは学童保育の子どもにだけに提供されるので,おやつの時間や,もし学童保育メンバー専用のミーティングなどがあればその時間だけ,部屋が分けられるのが一般的です。

おやつやミーティングの他に,利用できる時間にも多少の差があります。そして,学童保育は有料で,「放課後子ども教室」は無料で使えるのは,大きな違いです。利用者の立場からすると,同じ所で同じようなサービスが,別々の名称で,片方は有料,片方は無料で行われている状態です。

図2:区の学童保育は有料で,放課後子ども教室は無料で利用できる

学童保育は公設事業と民間事業がある

放課後児童健全育成事業の学童保育は,自治体がここは放課後児童健全育成事業をしていると認可している認可学童保育だけを指しています。大田区の場合は,区の事業として行っている学童保育だけです。日々の運営は区から委託された民間企業が行っていますが,区の事業になります(公設民営)。

小学生の放課後に関するサービスは,もちろんこのほかにも,民間による無認可の学童保育も存在します。当時のいきちか学童クラブもここですね。習い事などもここに当てはめてよいと思います。完全な民間学童保育(民設民営)は,大田区の場合,手続きを行えば放課後児童健全育成事業と認可はされますが,しかし民間学童保育が認可されても補助金は1円も入りませんし,区が発行する学童保育施設リストにも載せてもらえません。何のメリットもないので,基本的に大田区の民間学童保育は認可申請手続きを行いません。大田区では公設と民設で世界が隔たっています。

自治体によっては民間の認可学童保育もたくさんありますが,ここは大田区の話に限定して,下図のように,認可学童保育と民間学童保育は,独立したものとして描きます。

民間学童保育は区や国からの補助金を得られないため,利用者が支払う利用料はどうしても高くなります。それでも多くのところでは公設学童にはない独自サービスを提供していると思いますので,子どもやご家庭の状況など,必要に応じてご検討ください。公設と民間の一番の違いは,公設の学童保育は「福祉」であるのに対して,民間学童保育は福祉ではないということです。

図3:小学生の放課後に関するサービスは,公的事業のほかに民間事業もある

児童館でも学童保育をしていることがある

さて,「児童館」についても,もう少し説明を加える必要があります。

児童館というのは,施設の名前です。乳幼児親子の居場所提供,小中学生向けの遊びの提供などを主な事業としています。乳幼児・小学生・中学生では遊び方が異なるので,一般的には対象年齢ごとに部屋や時間を分けて施設を開放しています。本来,児童館の利用は無料です。

ですが,一部の児童館では,上記の事業に加えて,「放課後児童健全育成事業」も行っているところがあります。もともと戦後の児童のために作られた児童館ですが,時代とともに役割が変化し,今は放課後児童のためにも役立っています。

2022年度の大田区の学童保育施設は,全85施設のうち,学校が50,児童館が34,その他が1施設です。認可学童保育の4割が児童館で行われています。

学童保育を行っている児童館では,同じ施設の中で,無料で利用できる児童館の役割に加えて,有料の学童保育の役割も併存していることになります。現場では「一般利用」,「学童利用」などのように呼び分けていますが,学校での放課後子ども教室と同様に,同じ箱の中で無料利用と有料利用の子が混ざり合って遊んでいます

下の図からは「放課後児童クラブ」は使わず,「学童保育」にします。意味合いとしては認可学童保育ですが,この言い方も使わないので,認可の文字も省きます。今までの説明で細部はご理解いただけたと思いますので,利用者が使う言葉でまとめていきます。

図4:児童館は,無料の一般利用と,有料の学童保育利用がある

放課後ひろばとおおたっ子ひろばは,場所の名前

さて,冒頭にリストアップした名称にもある「放課後ひろば」と「おおたっ子ひろば」ですが,学校の学童保育や放課後子ども教室を利用している場合,このどちらかの名称をよく聞くはずです。

これは,ひろば=広場で,場所を意味しています。そこの場所の施設の名前です。どちらも大田区固有の名称ですが,「放課後ひろば」は,他のいくつかの自治体でも使われています。

「放課後ひろば」も「おおたっ子ひろば」も,どちらも小学校の中にあります。校舎内だったり,校舎とは独立したプレハブ小屋だったりしますが,小学校の敷地内で,学童保育や放課後子ども教室が行われている,そこの場所の施設名です。

ただ「おおたっ子ひろば」が最高にややこしいので,あとで解説しますがいったん忘れてください。先に「放課後ひろば」について説明します。

「放課後ひろば」は,小学校内で学童保育と子ども教室が行われている場所

放課後ひろばは,「大森第四放課後ひろば」などの形で,冒頭に小学校名が入ります。その場所は,学校とは別の組織が運営しています。つい「大森第四小放課後ひろば」「大森第四小学校放課後ひろば」のように「小」や「小学校」の文字を入れたくなりますが,正式には入りません。学校内の空き教室であっても,ひとつの独立した施設扱いです。運営は,区から委託された民間業者が行っています。

なので,図では「学校での学童保育」と書いていますが,本来は,「学校の敷地内にある放課後ひろばでの学童保育」となります。しかし利用者は基本的に「学校の学童」としか言いません。同様に放課後子ども教室も,本来は「学校の敷地内にある放課後ひろばでの放課後子ども教室」ですが,実際に使うのは「学校の子ども教室」程度です。(「大森第一放課後ひろば」は例外的に,子ども教室は大森第一小の中ですが,学童保育は大森児童館の中で行われています。同じ「ひろば」なのに離れているという混乱事例です。)

この「放課後ひろば」という名前は誤使用が多く,学童保育の意味で使っている人もいれば,子ども教室の意味で使っている人もいます。

「児童館」が施設の名前で,その中で児童館としての一般事業や学童保育事業があるのと同様に,「放課後ひろば」も施設の名前で,その中で放課後子ども教室や学童保育の事業が行われています。

図5:「放課後ひろば」は「児童館」と同様に施設名

「おおたっ子ひろば」は,小学校の中の児童館みたいな役割の場所

さて,後回しにした「おおたっ子ひろば」。これは,小学校の敷地内にある,児童館みたいな事業をしている場所の名前です。執筆時では区内に7か所あります。

児童館同様に,乳幼児とその保護者に一般開放されていますし,学童保育や放課後子ども教室も行われています。ただ,児童館のような,小中学生への一般開放はありません。児童館とまったく同じではないため,児童館の分室扱いにはできなかったのだと想像します。乳幼児親子への一般開放がある点で,放課後ひろばとも異なります。だからそれとも違う,また別の名前を作ったのだと思います。

具体例を出して解説すると,西六郷小学校の中に,「西六郷おおたっ子ひろば」という場所(施設)があります。10時から15時までは乳幼児親子も使えます。 西六郷小学校の在籍児童であれば,放課後に,学童保育または放課後子ども教室として利用できます。

そして,この西六郷小の中で学童保育と放課後子ども教室をしているここの施設名は,これも「放課後ひろば」なのです。最高にややこしいことに,「おおたっ子ひろば」が「放課後ひろば」でもある事態になっています。西六郷小学校の中には「西六郷おおたっ子ひろば」という施設があり,そこが「西六郷放課後ひろば」という施設もかねていて,その西六郷放課後ひろばでは,有料の学童保育と無料の放課後子ども教室があるという状態です。なかなか厳しい状態です。

「フレンドリー」という場所もある

書くか迷いましたが,さらに,「フレンドリー」という施設も1か所だけあります。 入新井第一小の中にある「フレンドリー入新井第一」です。子ども教室をやっていない,学童保育だけの施設です。

利用者の立場で見ると,似たような内容なのに別の名前をもつ施設が次々と生まれています。役所の立場では別名称で区別する必要があるのだと思いますが,せめて,内容を想像しやすい施設名であってほしいものです。学童関係以外でも大田区には, PiO・micsおおた・エセナおおた・アプリコ・キッズな・ ゆいっつ・ゆうゆうくらぶなどの施設があるのですが,皆さま,これらの施設名からここは何をしているところかを想像できるでしょうか・・。

さて,この「おおたっ子ひろば」と「フレンドリー」ですが,これらを図解の中に加えるのは難易度が高く,図解したいのはやまやまなのですが,本件にこれ以上時間を割くことができないので,あきらめます。どなたか図解できた人,ぜひご連絡ください。(-人-)

放課後等デイサービス

療育の必要性がある児童に限り,放課後等デイサービスという選択肢もあります。放課後児童健全育成事業としての学童保育の目的が「適切な遊びと生活」であるのに対して,放課後等デイサービスは,「生活能力の向上のために必要な訓練,社会との交流の促進その他の便宜を供与すること」と決められています。大事な役割に「その他の便宜」というおそろしく解釈の余地が広いものを入れているため,実際に行われていることや特色は,施設ごとに本当に多種多様です。

本記事では遊びと生活としての居場所を主なテーマに書いていますので,目的が異なる放課後等デイサービスについては,存在の紹介にとどめます。利用方法等を知りたい方は,次のリンクボタンから大田区の説明ページをご覧ください。

どれを利用するか(あるいはどれも利用しない)は,場所,料金,時間,内容などで決める

  • 民間学童保育
  • 民間の習い事等
  • 学校の学童保育
  • 学校の子ども教室
  • 児童館等の学童保育
  • 児童館の一般利用

上記の小学生の放課後に関するサービスは,場所,料金,利用可能時間などが異なります。民間と公的では,サービス内容も大きく異なります

ご家庭のそのときそのときの状況に応じたものを選んでいただければと思います。

学校の「放課後子ども教室」は無料で利用できますが,1年生の4月は利用できないことになっています。その期間を無料で過ごしたければ,児童館の一般利用も選択肢に上がります。(2022年3月追記:2022年度は4月の給食開始日から「放課後子ども教室」を利用できそうです!

「放課後子ども教室」は,夏期は17時まで,冬期は16時30分までですので,それ以降の時間も利用したければ,学童保育が選択肢に上がります。もしくは,子ども教室を利用したあとに夕方からの習い事に行く「はしご」利用もあり得ます。

区の学童保育は,通常の審査を経ての申し込みの他に,1日単位の「一時利用」の申し込みもあります。こちらはほぼ審査はありません。17時過ぎまで預けたいときが数日単位であるときは,学童保育の一時利用も選択肢に上がります。しかし,申込み書類の現地受け取り+申込み書類の持ち込み+銀行窓口での納付書払いという感じで手間が大きく,このハードルをクリアーできる人だけが利用できます……。

そして,このようなサービスを何も利用しないという選択肢も,もちろんあり得ます。

放課後は帰宅し,在宅の保護者や親族と過ごすこともあれば,近所の身内・知人宅や,子ども同士で過ごすことも,あるいは,子ども本人と状況が許す場合は子ども一人で過ごすことも,選択肢としてはあり得ます。

自分で抱え込まず,使えるサービスは使っていただきたいですが,一方で,「用意されたサービスを消費する」ことに慣れすぎて,オリジナルの過ごし方をカスタムメイドすることや,自分たちで助け合う発想が完全になくなってしまうのは不安です。

「自助」「公助」という言葉がありますが,そのどちらでもない,仲間同士で支え合う「互助」という考えもあります。そしてこの「互助」が気軽に使えるようになると,社会はもっと生きやすくなるのではと思っています。

たとえば,夏休みの朝の学童が始まるまでの30分だけでも,信頼できる友人に預かってもらえると助かるようなことがあると思います。もちろん,本来「互助」が一番気を使うものです。近しいからこそ相手の都合を慮って遠慮したり,要望を細かく伝えられなかったりしがちです。謝礼もどうすべきか迷います。それでも,みんなが少しずつこの「互助」に慣れて,うまく機能するようになったなら,その社会では今よりずっと生きやすいはずです。

どうか,多数の選択肢の中から,周囲にも相談しながら,ご家庭に最適なものを柔軟に組み立ててみてください。

図6(最終形):放課後に関するサービス各種に加えて,サービスを利用せずに自助・互助で過ごす方法もある

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