保育施設の遊具の安全性について

10月14日,保育園の遊具で2歳児の首が挟まった事故がありました。18日現在,まだ意識不明の重体ということで,早い回復を心からお祈りします。

この事故に関して,たくさんの保育関係者が,それぞれ思うところをコメント欄やSNSなどで発信されています。その中で少し思うところがありましたので,今回ブログに気持ちをまとめています。

配置基準の話にすり替えないで

このニュースに関する発言で違和感があったのが,職員配置基準に結びつけたコメントでした。

1~2歳児と職員の人数比は,国が定める基準では6:1です。事故のあった園では2歳児17人:保育士3人であったそうなので,配置基準内です。これに対して,「ちゃんと基準内だし,園を責めないで」「基準内でも子どもを見るのは大変だよね」「そもそもこの基準も少ないよね?」「配置基準を増やすべき!」という意見や議論が,一部でかもしれませんが,ありました。

配置基準について現場の方がいろいろ思うところがあるのは分かります。それはそれでよいのですが,この遊具の事故を,ご自身の関心事である配置基準の問題にすり替えることには,違和感がありました。

これは遊具での事故です。職員数について論じる前に,今は,遊具の安全性について論じませんか。

生命の保持が何よりも大切

この事故は,園庭の遊具の隙間に2歳児の首が挟まったというものです。今回は首という深刻な部位が挟まってしまいましたが,首以外にも,足や肩など体の一部が挟まる危険性は十分に感じられる遊具に見えました。

そしてこの遊具には,大人の目が届かない「死角」ができていたことも,重大な問題です。

挟まる危険性があり,さらにそれを見逃してしまう死角まである遊具であること。そして,そのような遊具が,どこかのアスレチック場などでなく,安全であるべき認可保育園にあり,実際にその遊具で日常的に低年齢児を遊ばせていたこと。これは十分に問題なことのはずです。

今までこの園で,これらの問題について話し合われたことはなかったのでしょうか。子どもを預かる専門家集団の間で,それらの危険性に気づかないなど到底ありえないと思っていましたが,ただ,この悲しい事故が起き,それでもまだ,保育現場で働く方々が,この遊具の危険性でなく職員配置について物申す姿を見ると,もしや本当にこの遊具の危険性について話題にならなかった可能性もあるのでは…と,思えてくる次第です。

保育にはさまざまな目標がありますが,間違いなく何よりも優先される目標は,生命の保持です。生命を保持するための安全の確保が,何よりも最優先されるものです。

建物や遊具が安全なものであること,衛生管理がなされて安全であること,防犯や防災の対策が行われて安全であること。これらは何よりも優先されることのはずです。たとえば,豊かな感性,自然への愛情や畏敬の念,数や文字への関心などを育むための取り組みも大切ですが,当然,それらはすべて,「安全の確保」が基底にあってこそ成り立つものです。

保育関係者は,保育の専門家として,安全に対して敏感でなければならないと思っています。

だからこそ,ぱっと見でも挟まる危険性と死角の存在が分かるこの遊具が,認可保育園で日常的に使われていたというのは,とてもショックな出来事です。そして,一部の保育関係者がこの遊具に対してショックを受けていないように見えることも,重ねてショックでした。繰り返しますが,この事故の重大な問題は,決して職員数ではないはずです。この遊具の危険性を理解できないことが問題です。

どうか今一度,環境の点検を

保育所も,学童保育施設も,この悲しい事故をひとつのきっかけに,今一度,保育環境の点検をお願いできればと思います。保育の専門家として,プロとして,安全な環境構成を最優先に取り組んでいただきたくお願いいたします。

一部の方からは「複合遊具がなくなるのは残念」「なくなるのは困る」という声もあがるかもしれません。しかし,体が挟まる危険があり,しかも死角のあるような遊具は,保育園にふさわしいものではないはずです。一部の方の個人的体験や感情,あるいは惰性等に流されず,どうか専門的見地に基づいて,あるべき保育環境を追求いただきたいと願います。

さらに言えば,本来,保育の環境は,子どもに応じて常に見直し続け,構成し続けるべきものです。ですが大型の複合遊具は,柔軟な変更がほとんどききません。大型の既成遊具に頼るのは「環境構成のサボり」につながりやすいと感じています。保育の神髄は保育環境の構成にあるとも言えますので,そこをサボるということは,どうしても保育の全体的な質の低下につながります。

どうか職場全体で,安全かつ子どもにとって有意義な遊びの環境/保育環境とはどのようなものかを,ディスカッションいただければと思います。

このような環境構成は,もちろん施設管理者の責任で行うものです。ですが,お勤めの職員の方々も,どうか子どもたちの安全のため,ご協力をお願いします。

もし,安全面で不安な点があるにも関わらず施設責任者が対応してくれないなどのケースがありましたら,一度私どもにもご連絡いただければと思います。私どもでできることを考えさせていただきます。「諦めて,見て見ぬふり」は,ご自身にとっても,子どもたちやご家庭にとっても,みんなにとって不幸なことです。それだけはしないでいただきたいと,そして保育業界がそのような世界にならないよう,心から願うばかりです。

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