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ツマグロヒョウモンといきちか花壇

花壇プロジェクト

蝶が来るバタフライガーデンを目指して

東京都大田区の公園花壇をみんなで気軽に自主的に使いながら,地域の新しい関わり合いを作る「いきちか花壇プロジェクト」。何もないところから始まり,新しく集まってくれた人たちで話しながら,花壇運営をしています。

ガーデニング素人の私は,最初,花壇は「花を植える場所」としか思っていませんでしたが,虫が好きな植物を植えて「虫を育てる場所」にもできるということを,教えていただきました。

蝶を呼び,蝶を育てる庭を「バタフライガーデン」と呼び,これはガーデニング界隈では確立された用語のようです。花だけではない花壇の使い道としてとても面白そうなので,いきちか花壇も「バタフライ花壇」になること,ひいては,この新蒲田二丁目児童公園が「バタフライパーク」になることも,一つの挑戦として取り組んでみることにしました。実践しながら学んでいきます。

蝶の好きな植物

蝶の幼虫は,種類によって,好みの葉っぱが異なっているようです。そうやって「狙って」植物を植えていくというのが,ガーデナーたちのやる気を一層くすぐるのかもしれませんね。

海野和男(編)『花と蝶を楽しむバタフライガーデン入門』より,それぞれの蝶の食草をご紹介します。幼虫のときにこの葉っぱを食べるということです。

  • キアゲハ(アゲハチョウ科):セリ科植物のセリ,三つ葉,にんじん
  • クロアゲハ(アゲハチョウ科):ミカン科のミカン,カラタチ,ユズなど
  • アゲハ(アゲハチョウ科):ミカン科のミカン,カラタチ,山椒など
  • モンキアゲハ(アゲハチョウ科):ミカン科のカラス山椒,キハダ,栽培種のミカンなど
  • カラスアゲハ(アゲハチョウ科):ミカン科のキハダ,カラタチ,コクサギなど
  • シロオビアゲハ(アゲハチョウ科):ミカン科のサルカケミカン,ヒラミレモンなど
  • ナガサキアゲハ(アゲハチョウ科):ミカン科の栽培植物
  • ジャコウアゲハ(アゲハチョウ科):ウマノスズクサ科のウマノスズクサ
  • アオスジアゲハ(アゲハチョウ科):クスノキ科のクス,タブノキ,ニッケイなど
  • スジグロジロチョウ(シロチョウ科):アブラナ科の野生種のほとんど。栽培種につくこともある
  • モンシロチョウ(シロチョウ科):アブラナ科のキャベツなどの栽培植物。イヌガラシなどの野生種にもつく
  • キチョウ(シロチョウ科):マメ科のネムノキ,ニセアカシア,ハギ類など。草木のマメ科にもつく
  • モンキチョウ(シロチョウ科):マメ科のムラサキツメクサやクローバーなど
  • テングチョウ(テングチョウ科):ニレ科のエノキ,エゾエノキ,リュウキュウエノキ
  • オオミスジ(タテハチョウ科):バラ科のウメ,スモモなど
  • ルリタテハ(タテハチョウ科):ユリ科のサルトリバラ,ホトトギスなど
  • アカタテハ(タテハチョウ科):イラクサ科のカラムシ,コアカソ,​ヤブマオなど
  • キタテハ(タテハチョウ科):クワ科のカナムグラなど
  • ミドリヒョウモン(タテハチョウ科):スミレ科のスミレ類各種
  • ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科):スミレ科のスミレ類各種
  • オオムラサキ(タテハチョウ科):ニレ科のエノキ,エゾノキ
  • コミスジ(タテハチョウ科):マメ科各種,ニレ科のハルニレなどかなり広食性
  • ヒメシジミ(シジミショウ科):マメ科のタイツリオウギ,キク科のマアザミなど
  • ベニシジミ(シジミショウ科):タデ科のスイバ属
  • ツバメシジミ(シジミチョウ科):マメ科の各種,特にシロツメグサ
  • ヤマトシジミ(シジミチョウ科):カタバミ科のカタバミ
  • ジャノメチョウ(ジャノメチョウ科):イネ科,カヤツリグサ科各種
  • イチモンジセセリ(セセリチョウ科):イネ科,カヤツリグサ科の各種,特にイネを好む

いろいろですね。

いきちか花壇には,このうち,セリ科のディルやオルレア(キアゲハが好き),スミレ科のパンジーとビオラ(ミドリヒョウモン/ツマグロヒョウモンが好き),カタバミ科のカタバミ(ヤマトシジミが好き),…あとマメ科の何かと,きっとイネ科の何か…も,植わっています。

ツマグロヒョウモンの幼虫発見

彼/彼女と初めて対面したのは,2021年5月26日。しばらく雨が続いて,いろいろな虫がいっきに増えたと感じていた頃です。

ものすごく強そうな風貌のツマグロヒョウモン(幼虫)

黒とオレンジに,そしてトゲトゲ。ものすごく強そうな風貌です。見慣れた今はかっこいいと思えるのですが,初めて視界に入ったときは,正直,ギョッとしました…。

事前に予習で写真を見ていたおかげで,ツマグロヒョウモンの幼虫だと気づくことができました。

緑色のイモムシ(アオムシ)は,蝶なのか,蛾なのか,ハバチなのか,全然見分けが付かずに困っていますが,一方でこちらのツマグロヒョウモンは,間違いようのない独特の風貌です。分かりやすくてありがたいです。特徴的な見た目に加えて,ビオラのところにいたことからも,ツマグロヒョウモン確定です。

少し前からビオラとパンジーがよく食べられていたのは,君が食べていたのか!と合点がいった瞬間でもありました。

食のこだわりが強いツマグロヒョウモン(スミレ類しか食べない)

その後,すくすく育つツマグロさん。

6月5日には,体もずいぶん大きくなり,花壇で目立っていました(公園の利用者がビックリしないか心配になるほどに……)。この日,数えてみると,7匹確認できました。

そして,12月から咲き続けたビオラもパンジーも,さすがに時期が終わりかけな上に,食べ盛りのツマグロたちにモリモリ食べられ,すっかりカスカスになりました。このペースで,ツマグロたちの食料が足りるのか,心配にもなってきました。

(ビオラ・パンジーはモリモリ食べられ,結局,花のタネは取れませんでした…)

カスカスになったビオラ
巨体化して目立つツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモンの脱皮

それから数日経った6月9日。あちらこちらの葉っぱで,ウニようような物体が付いているのを見つけました。黒のトゲトゲで真ん中にオレンジ…これは絶対,ツマグロヒョウモンですよね。

葉っぱに付いた,いかにもツマグロヒョウモンの,何か

蝶の幼虫は何回か脱皮を繰り返しながら成長するので,これもきっと,脱皮の際の抜け殻と思われます。

ちなみにアゲハチョウは5回脱皮し,それぞれ1齢幼虫,2齢幼虫,3齢幼虫,4齢幼虫,5齢幼虫と,段階の呼び名があるようです。一方ツマグロヒョウモンの脱皮数は定まっていないようで,だいたい5回が多そうですが,6回,7回する個体もあるとか,ないとか…。

先日見たツマグロの大きさと比べて,4分の1程度の長さしかありません。最初,これは抜け殻の一部で,残りは土に落ちているのかと思ったのですが,ぎゅーーっと圧縮しながら脱ぐので縮こまり,これが抜け殻の全部だと教えていただきました。(その後,試しに引っ張ってみましたが,もろくて伸びませんでした)

そろそろサナギになる頃と思っていたのに,まだ5齢幼虫あたりになったばかりなら,食料が足りないじゃないか…,と本格的に食料不足が心配になってきました。

実際にその頃,花壇で見かける数がぐっと減りました。4日前にはあれほど花壇で目立ち,7匹はいたのが,この日は探しても,2匹しか見つけられませんでした。最近ここで脱皮したばかりならまだいると思いますし,しかも脱皮してさらに大きくなったなら,絶対目立つと思うのですが…。

ツマグロヒョウモンの蛹化

なぜツマグロヒョウモンを見かけなくなったのか……。食料を求めて別の場所に移動したか……。あるいは食料が足りずに弱って,鳥に食べられてしまったか……。

6月11日,やはりざっと探しても,ツマグロの姿は見えませんでした。しかしビオラ(食料)が完全に底をついた訳ではないので,まだ数匹かはいるはずだ!と,探して探して,・・・見つけました!

小枝にぶら下がったまま動かないツマグロヒョウモン

スミレ科の食料がない花壇の奥の方で,小枝にぶら下がっていました。水やりの水がかかっても,ピクリとも動きません。

これは・・・サナギになる直前・・・!?

先日の抜け殻は5齢幼虫あたりになった際の抜け殻と思っていたので,サナギになるのはまだしばらく先かと思っていました。でもこの子はサナギになりそうです。期待!というか願望!食料難問題があるので,早くサナギになってほしい!

サナギになる瞬間を見届けたいものですが,しかしここは公園。ずっと公園にいる訳にもいきません。

そして翌日,6月12日,同じ場所を探してみると・・・。

サナギになったツマグロヒョウモン

サナギがありました!サナギになっていました!!!わーーーい!!

枯れ葉そっくりな地味な色ですが,よく見ると,トゲトゲに加えて,キラキラゴールドの突起があります。アクセサリーのようで,綺麗です。この綺麗な金色が,ツマグロヒョウモンのサナギの特徴です。

このゴールドがないと枯れ葉と見分けがつかず,私のような人間がポイっと捨ててしまいそうです…。このゴールドは,捨てられないためのツマグロの生存戦略でしょうか…?

そして,今が蛹化(ようか)の時期ならば,他にもサナギがあるはずだと,花壇の奥深くを探して,探して・・・,この日,計4つのサナギと,サナギになる直前のぶら下がり幼虫を1匹,見つけました。(後日もう1個見つけました)

ぼやけた輪郭のツマグロヒョウモンのサナギ(写真のピントもぼけてます)

ただ4つのサナギのうちの1つは,ちゃんとぶら下がれていなくて,最初に発見したサナギと比べると体もブニブニで,コンディションが悪めに見えました。金色がなかったらサナギと気づけません。

コンディション悪そうに見えたツマグロヒョウモンのサナギ

蛹化がうまくいかずにコンディションが悪かったのかと思っていたのですが,今改めて写真を見て,もしかして,わりと羽化(うか:成虫になって出てくること)の直前だったのではと,今さらですが思えてきました・・・。まだ経験値が足りず,いろいろ自信ありません。

ぶら下がれていないサナギは接着剤でつけてあげる方法もあるらしいのですが,ここは自然に任せて,そっと葉っぱに乗せておきました。そして数日後,このサナギは消えました・・・。

ちなみに,サナギって小さいのですね。幼虫のときのサイズ感で探していたのですが,見つけたサナギは,幼虫のときの半分から3分の2ぐらいの大きさでした。

こうして花壇の中でツマグロヒョウモンの幼虫の姿はなくなりました。タイミング的には,あの抜け殻は5齢幼虫になった抜け殻でなく,サナギになった際の抜け殻のようにも思えます。しかしサナギになるときにあのような抜け殻ができるのかは不明ですし,抜け殻とサナギの位置も全然一致していません。いろいろ謎すぎて,モヤモヤがずっと残っています・・。

ツマグロヒョウモンの羽化

サナギになったら,次は,きれいな蝶が出てくるのを待つのみ!

サナギになってから成虫になるまでの期間は,だいたい7~20日とか。幅がありすぎて読み切れません。いつか分からない羽化の瞬間を公園で見るというのは,相当にハードルが高めです。(´д`)

花壇の手前にあったサナギは,あるとき(6月19日),丸ごと消えているのに気づきました。

奥まった所のサナギは,あるとき(6月25日),空っぽになっているのに気づきました。

空っぽになったツマグロヒョウモンのサナギ

他のサナギも,空っぽになっていたり,サナギごといつの間にか消えていたりで,結局,羽化の瞬間どころか,羽化した蝶の姿自体,一匹も見ることができませんでした。

残念・・・!

今回は初めてだったこともあり自然に任せて見るだけに徹しましたが,蝶好きのメンバーが増えれば,この先1度ぐらいは,サナギを各自宅に持ち帰っての観察会も行ってみたいと思っています。

蝶好きな方や,公園花壇で一緒に何かしてみたい方は,ぜひご連絡ください。この記事内の,私がよく分かっていないことへのツッコミやご教示もいただければ,大変助かります。(>人<)

さて,成虫の写真がないままなのも締まらないので,最後に,フリー素材からツマグロヒョウモンの成虫の写真をお借りして掲載します・・・・。こちらが,今回見逃した&撮り逃した,ツマグロヒョウモンの羽化した姿です。このような蝶が,きっと公園から,大空へ飛び立っていったと思われます。 I hope that your life will be wonderful !!

この公園がふるさとだから,疲れたときなど,いつでも気軽に帰っておいでね。(^^)

ツマグロヒョウモンの成虫の姿(イメージ)

2022年12月追記

2022年,自宅でツマグロヒョウモンの飼育観察をしました。小さな若齢幼虫から,無事羽化して飛び立つまでを,見守ることができました。時間ができれば写真や動画つきで成長過程をまとめたいですが,ひとまず新たな発見があったものをリストアップします。

  • 幼虫はほとんど目が見えていない。顔で触りながら状況を確認している。
  • フンは緑色。緑の葉が緑のフンに次々変換されていく。
  • 脱皮のたびに大きくなるが,脱皮直後は実はあまり大きさは変わっていない。脱皮の翌朝に5ミリほど大きくなっている。
  • エサがあるかぎり,幼虫はさほどウロウロしない。移動距離はごくわずか。
  • サナギになる前はすごく食べる。食べながら寝落ちし,意識が戻ればまた食べるその姿は,まるでフードファイター。食べ尽くすと,サナギになろうかなモードになる。
  • サナギになるための場所を探し始めると,移動距離が大きくなる。
  • サナギになる場所を見つけて数時間留まっても,人間が動かしすぎると,その場所は危険と判断してやめてしまう。
  • サナギになるぞモードになると,体が縮む。
  • サナギになる準備として口から接着剤を出すときも,本当にその場所が安全なのか,しつこく周りを確認する(目は見えていないので顔を動かしながら)。
  • 接着剤におしりをつけてから,足を1つ1つ外して完全にぶら下がるまで,6時間ほどかかる。すごく慎重。
  • ぶら下がりが完了した「前蛹」になってから,いつ「蛹化」を始めるかは,読めない。蛹化は一瞬で終わる。
  • 蛹化のときに激しく体を振り回しながら脱皮するので,抜け殻は飛んでいく。公園で抜け殻の場所とサナギの場所が一致していなかった謎が解けた!
  • サナギになった瞬間からキラキラゴールドはある。
  • サナギになったばかりのときは体に透明感があるが,時間が経つと乾いて,茶色いカサカサになる。一段と縮んで,終齢幼虫時代の半分ほどのサイズになる。
  • サナギになっても,人間が居場所が揺らすと,やめてと首を振るように,ぶらんぶらんと動く。
  • 羽化する前には,まず全体が黒くなり,次にキラキラゴールド部分がブルーメタルに変わる。ブルーメタルが輝きをなくして黒っぽくなれば,本当に羽化間近。
  • 羽化はあっという間に終わる。
  • 羽化後数時間は抜け殻に止まったまま。途中で赤い排泄物(幼虫時代の内臓)を出す。
  • 動き回れるようになっても,すぐには飛ばない。うちの子は丸2日間飛ばなかった。羽をブーンとすごい勢いで震わせてから,ふわっと飛んだ。ぎこちない飛び方で大空に旅立つ姿は,感無量。

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