いきちかクラブは,東京都大田区のふれあいパーク活動という制度を利用して,公園の運営活動をしています。
ふれあいパーク活動実施要項によりますと,ふれあいパーク活動とは「地域住民及び企業等が区との協働により公園を自主的に管理すること」であり,その目的は「公園が地域の財産として愛され,有効に活用されること」とされています。そして私たちが担当している運営活動は,「花壇づくり,季節の行事,その他公園を有効に活用して行う自主的活動及び公園利用者のマナー啓発等」とされています。
ふれあいパーク活動を始めた最初の理由は,この地域(主に蒲田地域)の公園の汚さと治安の悪さに,いたたまれなかったからです。この地域の公園はいつもゴミだらけです。タバコやビール缶だけでなく,盗難品と思われる自転車のサドルなども捨てられています。公園内で公然わいせつ事件もありました。このような地域で自分や子どもたちが生活し,育っていくことが,耐えがたいことでした。
人任せでは改善しない現実を踏まえ,自分たちも公園の管理に関わろうと,この制度に申込みました。清掃は先に担当している団体があって重複担当はできないとのこと※で,いきちかクラブは「運営活動」と「点検活動」を担当しています。申し込みは運営活動だけですが,毎年,点検活動も自動で付いてきます。そして実際の活動で運営活動と清掃は切り離せるものではなく,担当外ですが当然清掃も行っています。
(※清掃は福祉団体がふれいあいパーク活動として行っているように聞いていたのですが,数年後,ボランティアではなく清掃を区から受託していたことがわかりました。障害者優先調達推進法により,私たちボランティアより障害者就労支援等が優先されるとのことです。それはそれで仕方ないですが,情報が正確に伝わってこないのは不便です)
地域を変えていくには,行動する仲間と,自分たちで行動する風土(伝統)が必要です。そのため,新しい自主的なつながりを作ることも大切な目標に,広く呼びかけ,地域を巻き込みながら活動しています。くわしくは「いきちか花壇プロジェクト」のページをご覧ください。
現在,これらの活動は完全ボランティアで行っています。大田区のふれあいパーク活動の制度下では,運営活動と点検活動の担当団体には,物資や資金の支援はありません。自分たちで,時間,労力,頭脳,そしてお金を持ち出しながら,活動しています。2021-2022年度はふれあいパーク活動とは別の基金から助成を得ることで活動資金ができましたが,現状の持ち出しの多さは,大きな課題です。ボランティアにとって一番大切なのは「活動を楽しむ」ことです。しかし時間的にも金銭的にもあまり余裕のない働き盛り世代にとって,この持ち出しの多さは,ときに,楽しむ以上の負担となります。大田区の現状の制度では,時間的・金銭的・肉体的のすべてに余裕のある人しか活動を続けられないように感じます。
他の多くの自治体にも,公園を自治体と住民が協働運営する制度(アダプトプログラム)があります。話を伺うに,花苗を無料で選べたり,ゴミ袋や軍手の支給があったりするところも多く,自治体による支援の差が大きい印象です。公園に限らず,ボランティア活動そのものに対する支援が充実している自治体もあります。記事の最後に23区の支援内容を書き出しましたので,ご参照ください。比較してみると,やはり大田区の公園ボランティアは,個人の負担が大きいほうに思います。
このような現状下であっても,自分たちの目標と,ふれあいパーク活動の目標(「公園が地域の財産として愛され,有効に活用されること」)の両方を大切にしながら,そして不特定多数が利用する場所であることを念頭に安全性と公益性を基本事項にしながら,知恵を出し合って公園づくりをしています。当然,いろいろな「したいこと」「してほしいこと」が出てきました。区との協働なので区にこまめに相談し,そして数ヶ月の待機を経て,このたびひととおりその返事が出そろいました。その内容を以下のとおり公表します。
- 花の説明等を通じた公園利用者とのコミュニケーションのために,黒板のようなメッセージボードを置きたい。危なくない形で。
→ ダメ。
- 花が咲かない季節も明るく保つために,花以外のオブジェ(オーナメント)を置きたい。市販品であったり,近隣の小学校や保育園等の子どもたちの作品であったり。危なくない形で。
→ ダメ。
- 枯れ葉や剪定枝を捨てずに堆肥にするために,キエーロタイプの屋根つきコンポストを置きたい。公園の奥のほうで。
→ ダメ。
- ゴミのひどさに心を傷めた子どもから「ぽいすてしないで」と書いて貼りたいと提案があったので,ゴミ捨てマナーポスターを自作したい。地域の人(学校等や個人)と連携もして。
→ ダメ。
- 外国ルーツの人など漢字を読めない人もいるので,公園内の掲示物は「やさしいにほんご」で作ってほしい。
→ すでに漢字にふりがなをつけている。(という返答でしたが,実際はあまりついていません)
- 業者とボランティアの草刈りのタイミングがかぶり効率が悪いので,業者の作業予定を知る手段がほしい。
→ ダメ。方法がない。
- 壁一面に広がる汚い枯れツタを撤去してほしい。この放置された枯れツタで公園全体に「無法地帯」感が出て,治安を悪くしている。
→ ダメ。大工事すぎる。
- アーチ柵のサビがひどいので,塗料を塗ってほしい。塗料を用意いただければ自分たちで塗ることもできる。
→ 全部塗り替えるのは高額になるので,ロープ状の柵に付け替える。時期未定。
- 拾ったゴミや汚物を自宅に持ち帰るのは衛生上危険なので,公園で回収してほしい。
→ OK。
- 花壇頭上の枝でケガをしたので,切るか保護かしてほしい。
→ OK。
- ハチに刺されたので,ハチの巣を撤去してほしい。
→ OK。
- ゴミ出しプレートが外れていたり古いものが残っていたり,放置感があるので,整理してほしい。ゴミ出しプレートが花壇を隠しているので,場所をずらしてほしい。
→ OK。
- 公園内禁煙とする条例が守られるよう区の責務を果たしてほしい。
→ 指定公園を喫煙マナー啓発指導員の重点巡回地に入れる。
- 小児用車いす(バギー)で新蒲田二丁目児童公園の入り口の段差を乗り越えられないので,バリアフリー対策をしてほしい。
→ 北側の大きな段差は大工事が必要なので,ダメ。南西側の小さな段差は,対応する。(と昨年度3月に決定いただきましたが,着工時期は未定)
枝を切るとか,プレートを整理するなどは,すみやかに対応くださいました。条例等で定められている区の責務に関しても,基本的な対応は行っていただきました。初年度は相談もしづらい状況だったのに比べると,今はコミュニケーションもよくとれ,対応もよく,ありがたいかぎりです。
しかし,今回相談していたうちの,いわゆる新しい企画に対しては,ほとんどが「ダメ」という返答になりました。そして,メッセージボード,オブジェ,コンポスト,ポスターなどがダメな理由については,「公園での設置は区がすることだからボランティアは設置をしてはいけない。ボランティアは基本だけしてほしい」という説明を受けました。
ダメという結果以上に,この説明に混乱しました。基本が何かは不明瞭ですが,ボランティアが公園をより良くしようと思うこと自体が否定されているようにも聞こえます。これでは,私たちが区と協働で公園を管理することの意義から,くつがえってしまいます。
なお,花壇内の足場はボランティアが自費で設置するように言われているので,すでに説明に矛盾が生じています。植えてよいもの,ダメなものもそうですが,区から口頭で伝達されるルールには明確な根拠がなく,そのときの事情に応じてつど判断している印象を受けています。そのため今回も,説明の言葉どおりに受け取るよりは,「今はそれらを許可できない事情があるのだな」程度に受け止めようと思います。
つまるところ,制度の要綱があいまいで,この制度の神髄である「協働」「自主的に管理」などの意味合いが,区の事情に応じてつどつど変動すること,ないし,制度が形骸化し,本来の目的より業務執行上の都合が優先されていることが,根本的な問題のように思われます。
現状,多くの団体は高齢化が進み活動量が減っています。そして私たちは高齢化はしていませんが,このままでは資金もモチベーションも枯渇しそうです。近い未来,だれも活動できる人がいなくなる可能性がある状態です。
この制度の問題点が露呈した今,支援内容も含めて,制度の抜本的な見直しを始めていただければと願います。
23区の公園・清掃・花のボランティアに関する支援
台東区
花の心フラワーサポーター
- ジョウロ、剪定ばさみ等の園芸用具、活動ユニフォームの貸与
家庭から出る園芸用土を回収します
リサイクル園芸用土を配布します
プランター設置助成金
- プランター及びハンギングバスケット(花を植える容器)の購入経費
- 上記にある購入したプランター等に植える花苗代
- 花を植えるための土・肥料代
まちの美化里親制度
- 清掃活動で使用する用具等の提供。
- 活動時の事故等に備えたボランティア保険(傷害・損害賠償保険を含む)の保険料負担・加入手続き。(希望により加入)
大江戸清掃隊
- 清掃用具や半てん(大江戸清掃隊のユニフォーム)をお渡しします。
ボランティア清掃時の清掃用具の貸出し
- 台東区内で実施されるお祭りやイベント、団体の年間行事などで、清掃のボランティア活動を実施される方に対し、清掃用具の貸出しを行っています。
ふれあいサロンを応援します!(活動費の助成)
- 運営費:活動1回につき1,000円(ただし、月2回を限度とする)
- 交流費:月1回以上の開催に対し、サロン参加者の飲料・お茶菓子代として500円
- 会場使用料:有料公共施設を使用した場合1回3,000円までの実費(ただし、月2回を限度とし、領収書添付が必要)
- 会場借用料:個人の自宅を開放した場合1回500円(ただし、月4回を限度とする)
江東区
コミュニティガーデン~みんなで楽しむ「地域のお庭」~
- 看板の設置
- 園芸器具、肥料などの提供(「資材提供リスト」の品目から選択)
- 花苗の提供(春と秋の年2回)
- リサイクルたい肥「つちひめ」の提供
- アドバイザーの派遣(希望団体へアドバイザーを派遣し、現地で植替え等のレクチャーを実施)
- 見学会(お散歩しながら区内のコミュニティガーデンをめぐる見学会を年2回実施)
- 交流会(団体間での交流を図るための交流会を年2回実施)
- ボランティア講座(新たな活動団体を立ち上げるための講座(全4回)を実施)
江東区アダプトプログラム(こうとうまち美化応援隊)
- ビブス・帽子・腕章・火ばさみの貸与
- 専用ごみ袋の提供
- ボランティア保険の加入
- 参加団体の紹介
- 活動に関する相談等
ボランティア活動助成金
品川区
品川区みどりと花のボランティア
- 園芸・清掃用具の支給または貸与
- ボランティア保険の加入費用の負担
- 花壇維持管理の材料購入費用の一部を助成
- 花壇1m²あたり、年間10,000円以内を助成(ただし1団体あたり50,000円/年を限度)
子どもたちのアイデア等を活かした公園づくりワークショップ
地域貢献ポイント事業
- 高齢者の積極的な社会参加を図るため、おおむね60歳以上の区民の方で、区が指定するボランティア活動に参加した場合、1回につき、1ポイント(シール1枚)を差し上げています。(年間50ポイントが上限。)貯めたポイントは区内共通商品券との交換か、福祉団体などに寄付ができます。
大田区
ふれあいパーク活動
- 清掃活動を担当する団体に限り,支援金,掃除道具一式。花壇活動には支援なし。
おおた花街道
18色の緑づくり
- 花の種の配布
- PR用プレート・立札
- ロゴステッカー
荒川区
グリーンサポーターになりませんか
- 活動のためのほうきやちり取り等用具の貸し出し
- 活動を示す標識の設置
- 活動時の事故に備えるための保険への加入助成など
街なか花壇づくり事業への参加者を募集しています
- 活動しやすい場所を探します。
- 花壇やプランターを設置します。
- グループのサインボードを設置します。
- 花苗を提供します。
- 活動に必要な道具は全て支給または貸与します。
- 草花の育成に関する相談に乗ります。
- ボランティア保険に加入します。
- 皆さんの活動の様子をホームページ等で紹介します。
あらかわ「緑・花」大賞
- 優れた花壇や緑のカーテンなどをつくり育てている方を表彰して活動の励みにするとともに、美しい花や緑を区内に広げていくために、平成21年度から設けられた制度です。各部門について、「大賞」、「特別賞」、「奨励賞」を各1件程度ずつ表彰し、賞状と記念品を贈呈します。
練馬区
住民による公園等の花壇管理(区民協働花壇事業)
- 1年度分の委託料(花苗代)が前払い一括で支給されます。
- 区ホームページで活動団体の一覧の他、団体が運営するホームページやSNSを紹介します。
公園等の住民自主管理
- 園内の清掃、除草および草刈り等にかかる費用は区が負担し、活動報告の確認、検査をした上で、年4回、委託料としてお支払いします。
環境美化推進地区・環境美化活動団体
- 持ち点の範囲内で希望する清掃用具をお選びいただきます。
ごみ拾い無料SNSアプリ「ピリカ」
みどりの活動団体登録制度
- 活動に必要な物品の貸与が受けられます。
- ボランティア活動を希望する方に、団体情報を紹介します。(窓口での閲覧のほか、区立施設での配布や区ホームページで紹介)
- 登録団体が行う広報活動をサポートします。(サポート例…チラシ設置〈区役所1階〉、ポスター掲示〈区役所18階〉、ぴいちゃんTwitterでの情報発信)
- 「四季の香ローズガーデン(光が丘5)」の講習室を先行して利用申込できます。また「普及啓発コーナー」の掲示板やパンフレットスタンドを利用して団体の情報を発信することができます。
- 区のみどりに関する情報(説明会・イベント等)が届きます。
花いっぱいにぎわい事業
- 練馬区がコンテナや鉢花代相当額の二分の一を負担します
憩いの森等の区民管理
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いきちかクラブ向井
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いきちか花壇プロジェクト
―みんなの花壇,みんなで使おう―
ご支援のお願い
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今の私たちの暮らしは,みんな,少しずつ苦しい状態です。既存の仕組みで解決できていない問題は,新しい仕組みが必要です。私たちと一緒に新しい仕組みを作り続ける人,私たちを支える人になっていただけないでしょうか。
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